CD-Rがコースターに変わる日。
2004年 04月 24日
Independent.co.ukの記事より。
CD-Rのパッケージには,よく「100年保存」とか,「数百万回の読み込み保証」など,データの保存性,安全性を謳った宣伝文句が踊っていますが,本当にそうなのでしょうか?
記事では,実験から得られた結果を基に,「メディアの保存性についてあまり過大な信頼を寄せないように」と警告しています。
実験では,密封したCD-Rを,保存には理想的な状態といわれる,温度湿度の安定した暗所で,2年間保存し,その後取り出して読み込み実験を行いました。
その結果,このように最良の保存条件だったにもかかわらず,ブランド品,ノーブランド品の区別なく,読み込み不能となるディスクが現れました。
考えてみたら,こういったメディアの記録面は化学物質で構成されているので,経年劣化が起こるのは当然と言えます。しかし,デジタルデータというものは永久に保存可能と考えがちです。
この誤解の原因は,コピーによる劣化が無く,(理論上は)無限にコピーが可能であるというデジタルデータの特性によるものです。しかし,デジタルデータには,メディア自体が化学変化を起こしたり,規格の旧式化,次世代メディアの登場によって,ほんの数年後には使用不可能になる可能性がある,という側面については,あまり考慮されてこなかったような気がします。
この問題については,過去にフロッピーディスクで,既に指摘されていましたが,CD-Rでも再び同様の問題が発生しつつあり,また実験では,DVD-Rでもメディアの化学変化による劣化が起きる事が明らかとなっています。
メディアは年々大容量化し,一枚のディスクに,日々の生活や業務で得られた情報の一時的なバックアップだけでなく,重要な公文書,そして人の大切な記憶を保存する写真アルバムなど,きわめて長期間にわたる保存が必要とされる情報を,大量に保存する事が可能になっています。そして多くの場合,メディアに貴重なデータをバックアップする事で安心し,その後の保存方法にあまり注意を払いません。
貴重な美術品・博物館資料を有している美術館・博物館ですら,同様の状況です。近年,デジタルメディアを用いた,展示品と来館者が双方向でコミュニケーションする事が可能な展示や,マルチメディア・データベースの構築が行われています。しかし,その導入にあたっては,その利便性とは裏腹に,常にメディアの寿命に配慮し,全てのデータを数年毎に,最新のメディアに永久にバックアップし続けなければならないという,莫大な経費的・人的負担の問題が指摘されています。
大切なデータを保存する際は,デジタルデータがイメージとは異なり,極めて不完全で,安定性の低いメディアに頼っている,という事実を肝に銘じておく必要がありそうです。
by okphex
| 2004-04-24 05:50
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