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by okphex
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環境に合わせた生活はどのように可能となるのでしょうか?(『変貌する大地』)

現在講読中の『変貌する大地』(クロノン,W)で、興味深い記述がありました。

後にニューイングランドと呼ばれる地(現在のボストン周辺)に、17世紀に、イギリスからの入植者が大挙として訪れます。
彼らは、新天地(北米大陸)の肥沃さを伝える、開拓者達の情報を信じて、わずかな食料だけを携えて渡来してきました。

しかし、イギリスとそれほど緯度が変わらないニューイングランドは、夏はより暑く冬はより寒さが厳しい過酷な環境でした。
この地を訪れた初期の清教徒入植者は、最初の冬の間に半数が命を落としたと言われています。

このような環境の中でも、北米先住民族の人々はほとんど餓死者も出さず冬を乗り越えていたそうです。
その理由は、非常に単純ですが、”最も食糧事情の厳しい冬期に賄うことができる食料の範囲内に、常に集団の人口を維持すること”でした。
これは経済理論の一つに照らし合わせても合理的な生存戦略なのだそうですが、いちいち複雑な計算式を組み立てて立証しなくても、充分に説得的な行動であると言えますね。

しかし、畑を開墾し、食料を貯蔵しておけば、さらに多くの人口が養えると、”合理的”に考える入植者には、こうした生存戦略は後進的としか映らなかったようです。

実際、この後旧大陸からの入植と開墾によって入植者の波は徐々に先住民の居住地域をフロンティアの中に飲み込んで行くことになります。
by okphex | 2010-07-19 23:51 | 人類学・人文科学