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by okphex
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鳩山前首相と映像上の語り方。

諸々の事情で慌ただしくしている間に、鳩山(既に”前”がついていました)首相が辞任し、管総理が誕生していました。
鳩山前首相率いる民主党は、「友愛」と「政権交代」を旗印に、国民の圧倒的支持を受けて(少なくとも獲得議席数では)、念願の政権交代を実現したものの、わずか8ヶ月という短命政権で終わりました。




鳩山政権崩壊の要因として、政治的な方向性のあやふやさ、前首相自身の「宇宙人」とも揶揄される発話の不明瞭さなどが取りざたされています。

僕は政治にはど素人なので、メディアを通じて流された情報、あるいは流されなかった情報(こちらの方が、当然辞任に繋がる政治家同士の駆け引きの俎上に登ったのでしょうが)の両面で、何ら新しい知見を開示できる訳ではありません。

しかし、鳩山前首相が、今少し「語る言葉」を、彼の言葉通り、本当に国民に対して語りかけていれば、もう少し支持率の下落の度合いも変わっていたのではと思います(いずれにしても、政治的には袋小路だったでしょうが)。

就任当初から気になっていたのは、鳩山前首相が、あまりにも生真面目に、ぶら下がり記者の質問に答えていたことです。マスコミは、表向き「国民目線で」といいながら、実は自紙の論調に沿ったような、あるいは言質を取るべく、恣意的に選択した質問を投げかけることが少なくありません。というか、この類のコメントを引き出すのが現場の記者の役割なのではないかと思います。
こうした記者の質問に対して、鳩山前首相が「この質問こそ、国民が真に知りたいこと」だと考えて答えようとしたところで、その答えが明瞭で、的確なものとなるとは思えません。

結果、マスコミを通じて流される鳩山前首相の語りは言語不明瞭、朝令暮改を絵に描いたようなものとなります。しかも彼の答えは、国民という漠然とした集団ではなく、目の前にいる、予め質問内容と答えを想定した記者に対して語ったものですから、大多数の視聴者(国民)からは、「この人、何も分かってない」という感慨を抱かせることになります。明確な解決策のあるはずのない米軍基地移設問題の混迷と相まって、彼の右往左往ぶりだけが目に付き、あっという間に”誰にも理解されない人”になってしまいました。

鳩山前首相が、「国民の理解を得られなかった」という言葉は、自分がカメラの前で語った言葉が率直に当の国民に伝わっていなかったことを意味しているのでしょうが、情報配信の間を取り持つメディアに政治的な介入意図がある以上、彼の思いが電波を通じて直接伝わるなどということはあり得ないのです。彼にはこの点に対するクレバーさが足りず、それが政治的な致命傷となってしまいました。

はっきり言って、鳩山前首相の掲げた政治的目標の多くは、複雑な利害関係を無視した、多分に空想主義的な要素があったと思っています。しかし、空想主義から始めても、それをより現実の政策としへと繋げていく道筋はいくらでもあったはずです。こうした政策的熟成を推進する世論を喚起することもマスコミの重要な役割の一つだと考えますが、ここしばらくの論調は、鳩山前首相の迷走ぶりを伝えるといった、揚げ足取り的な側面ばかり目立ちました。

政治家の政治的信念以上に、マスコミの社会的な信念や行動原理は一体どこにあるのだろうか、と素人ながら一抹の疑問を感じました。
by okphex | 2010-06-04 23:20 | News-そのほか