『江戸の火事と火消』
2010年 04月 22日
現在、表題の本を読んでいます。防火の面からみた江戸の都市構造、身分ごとに組織された火消組織、江戸っ子と呼ばれる町人意識を分析していて、とてもおもしろい内容です。
特に興味深く思ったのは、「鳶職人」と火消しの関係です。
江戸時代のほとんどの家屋は木造で、しかも屋根はわらぶきと、大変火災には弱い構造でした。さらに町人の住む区域は大変な住宅密集状態であったため、いったん火災が発生したら、一軒全焼で済むならまだ幸いで、数万人が焼け出される大火事に発展することも珍しくはありませんでした。
現在のように、大量の放水で火元を鎮火させるような設備が皆無に等しかったため(「龍吐水」という、簡単なポンプ式消火装置が、わずかながら使われていたようですが東京消防庁<消防マメ知識>)、消火活動と言えば、「破壊消火」が主流でした。
これは、言葉通り火災地域に隣接する家屋を速やかに取り壊して、それ以上の延焼を防ぐ、という今考えれば何とも手荒い手法です。
こうした家屋の取り壊しに活躍したのが、もともと建築工事を請け負っていた鳶職人なのだそうです。彼らは火災が起きると、素早く現場に駆け付け、「鳶口」という道具などを使って、家屋の取り壊しにかかりました。
鳶職人達は、他の火消しと同様、組毎に組織され、それぞれが衣裳の粋さと剛胆さ、そして火元への一番乗りを競っていました。こうした対抗意識から、しばしば火元にも関わらず、消火活動そっちのけで喧嘩に発展することがあったそうです。これが、「火事と喧嘩は江戸の華」と呼ばれた所以ですね。
現代は、消防局と消防団が地域の防火・消防活動の任に当たっていますが、かつてはこんな荒くれ男達の世界だったんですね。読み進めるうちに当時の情景が思い浮かんでくるような思いがしました。
by okphex
| 2010-04-22 23:36
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