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by okphex
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グローバル・シティに集積する資源と拡大する格差

現在、S・サッセンの『グローバル・シティ』を読んでいます。
びっしりと配置された文字と、詳細なデータで埋め尽くされた400ページ超の分量を誇る大作です。グローバル化が進む世界を、「都市」という観点から考察する際には、これからも必ず参照される研究と言って良いでしょう。

サッセンが探求しているのは、経済や産業のグローバル化が、都市を具体的にどのような形に変貌させていったのか、です。そしてその一つの答えとしてサッセンが導き出したのは、国民国家の枠内に留まらない、グローバル・シティ同士のネットワークと、その内部で進む産業構造、経済基盤、サービスの絶え間ない集積と、拡大し続ける所得格差でした。

本書が扱っているのは、主に1990年代ですが(初版は1980年代を扱っていました)、その後日本で急激に進行する経済の低迷と、富裕層と貧困層との間の格差の拡大の状況を見事に言い当てています。

「グローバル・シティ」として分析の対象となっているのは、ニューヨーク、ロンドン、東京といった、グローバル化を推進する役割こそ重要ではあるものの、ややくたびれた感のある都市です。昨今の中国の台頭が、果たして中国内にグローバル・シティを誕生せしめたのか、あるいは担い手の面子にはあまり変化が生じていないのか、サッセンの考察を知りたいものです。
by okphex | 2010-01-31 20:04 | 書籍