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写真関連のニュースと写真ギャラリー,そして文化人類学に関する記事を掲載しています。


by okphex
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手の平サイズの一眼カメラ。

ちょっと前の記事ですが、手の平に収まるコンパクトな一眼カメラが女性ユーザーを中心に人気を集めているそうです。
asahi.com"デジタル一眼、こだわる女性に人気 メーカーも照準"

確かに、オリンパス・「ペンE-P1」に代表されるように、高級感ある(実際価格は7~10万円台とコンパクトデジタルカメラより高価格)一眼カメラが数多く登場しています。キヤノンは「EOS-Kiss」シリーズで長らく小型デジタル一眼レフカメラ市場を引っ張ってきましたが、「ペンE-P1」などに較べると、「Kiss」すらも大振りなカメラに見えるところが不思議です。

デジタル一眼カメラは、あくまでもデジタル一眼「レフ」カメラではないところが肝心です。両者の違いの一つとしては、本体内にファインダーへ光を屈折させるミラーを内蔵しているかしていないかがあると思います。一眼カメラは、レフミラーを内蔵していないために、本体幅の縮小と、本体上部の「軍艦部」とも呼ばれるファインダーの出っ張りを削減することが可能となります。そのため、単に小型化するだけでなく、すっきりしたデザインとなります。

一眼カメラの形状は、現在のデジタルカメラユーザーには真新しく写るかもしれません。しかし、つい最近発表された「ライカ X1」のややクラシカルな外見からも分かるように、以前は小型で、すっきりした形状のカメラは珍しくありませんでした(もっともライカは「レンジファインダーカメラ」という、一眼カメラとは別の仕組みのカメラですが)。長い時を経て、カメラは機能とサイズを拡大する方向から、より扱いやすいカメラへと、回帰しつつあるのかも知れません。

興味深いことは、デジタル一眼カメラの位置付けは、従来であれば大型の一眼レフカメラとコンパクトカメラに挟まれた、サイズ的にも機能的にも「中途半端な機種」と見なされる領域であったと言うことです。実際これまでも、この領域の機種の多くは、実験的なカメラのままその役目を終えました(京セラの「コンタックスG」シリーズは数多くのユーザーと高評価を獲得しましたが、京セラの撤退に伴い製造中止となりました)。

しかし現在の一眼カメラ、特にオリンパスの「ペン E-P1」は、往年の「ペン」ファンからも、若い写真家からも高く評価されていますね。その理由として、「撮っている自分の姿を思い浮かべると楽しくなるデザイン性」と、「カメラを操作する感覚を味わえるマニュアル感」を両立させていること、などが大きいのではないか、と思います。以前のカメラ作りは、メーカーがカメラ本体の機能的な方向性を明確にした上で、後は画素数やCCDのサイズなど、数値的な機能の拡大によって差別化を図ってきました。これが現在のデジタルカメラ全体の高機能化に貢献したことは大いに賞賛すべきことですが、一方でメーカー主導の製品作りが、しばしばユーザーの視点を軽んじることに繋がっていたことも否めません。ようやくユーザーの満足感が製品作りに反映されるようになってきたのかも知れません。

このように僕は、「デジタル一眼カメラ」の登場は、単なる原点回帰でも、女性という新たなユーザー層の拡大の結果でもなく、カメラの新たな潮流と見ているのですが、果たして今後どのように発展するのでしょう。楽しみです。
by okphex | 2009-09-16 22:35 | カメラ・写真情報