スターバックスの役割。
2009年 09月 06日
上記の本を読んでいます。ここでいう「フリーエージェント」とは、私たちが良く言う「フリーランス」も含んでいるのはもちろんですが、企業に非正規の形態で雇用されている社員や、マイクロ法人、いわゆる「一人会社」の社長も含んだ幅広い意味合いとして使っています。要するに個人レベルを超えた組織に所属せずに生業を営んでいる人を指しています(ピンクはフリーエージェントとは逆の立場の人々、つまり企業のサラリーマンのような人々をホワイトの著書を引用して「オーガニゼーション・マン」と呼んでいます。
日本で非正規雇用労働者の割合が増加している一方、アメリカでは特定の企業に所属せず、個人単位で事業を営んでいる人が増加しているそうです。こうした状況はインターネットの発達といった肯定的な要因が促した一方、大企業の温情主義の終焉や終身雇用制度の崩壊といった環境の変化も大きく関わっているようです。
本書では「フリーエージェント」の生き方をかなり肯定的に描写しており、ハードな社会論としてはやや疑問符が付きます。従来型の縦構造ではなく、それぞれが能力を持った個人として協同する横構造の人間関係を考察した社会論であれば、「オーガニゼーションマン」の側での研究ではありますが、E・ウェンガ-の『コミュニティ・オブ・プラクティス』(翔泳社)があり、また橘玲の『貧乏はお金持ち』(講談社)はフリーエージェントの利点を節税という具体的な観点から説明しています。これら二冊の方がフリーエージェントの実体をより捉えやすいのではないかと思います。
ただ、ピンクも橘もフリーエージェントとして継続して事業を営むためには、安定した収入をもたらす顧客の存在が不可欠であることを示唆しており、これは多くのフリーエージェントがなかなか実現できない「壁」でもあります。フリーエージェントの研究書では、こうした理想と現実の乖離も示して欲しいところです。
さて僕が本書で最も興味を引いたのは、「スターバックス」の役割についての記述です。スターバックスは本書において、フリーエージェントの臨時の仕事場として、キンコーズと並んで有用であると説明されています。こうした具体的な利用方法を知ることも有益でしょうが、スターバックスがこれまでのカフェでは「邪魔な存在」と見なされてきた、コーヒー一杯で長居をする客や、ラップトップパソコンを取りだして仕事を始めるビジネスマン、商談に花咲かせる小人数のグループを狙いとして店舗作りを作り上げてきた、という方におもしろさを感じました。あの快適なソファや、話がしやすいように作られた小さな机は、おしゃれにコーヒーを楽しみたい人々を対象としていた訳ではなかったんですね。
これまでの業界の常識では、否定的に捉えられていた要素を、むしろ取り込んでいくことで独自の事業を形成して行く、こうしたスターバックスのような逆転の発想こそ、フリーエージェントを目指す人々が持つべきものですね。独自のアイデアを熟成させるだけではなく、自らの手で実現していく、そのおもしろさと責任こそがフリーエージェントとして生きる醍醐味かも知れません。さっそく考えてみましょう!
by okphex
| 2009-09-06 23:56
| 書籍