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by okphex
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革命と暴力。

『メルロ=ポンティ コレクション』「プロレタリアから人民委員へ」より
米大統領選は、事前予想通りオバマ候補の圧倒的勝利となりました。
今後は新大統領として課題山積のアメリカの舵取りに焦点が移ります。
経済問題と同様に世界に大きな影響を与えるのは、軍事的戦略でしょう。
ブッシュ政権の、軍事力を背景とした一国主義的戦略は転換するのでしょうか?
その決断は新大統領如何ですね。

こうした状況に絡んで、本日読んだ本の内容を少し紹介します。
メルロ=ポンティの「プロレタリアから人民委員へ」は政治に関する論考です。
マルクス主義がどのように革命を推進していったのかを解き明かそうとします。
論考の柱となるのは、「暴力」です。
革命時に生ずた直接的な力の行使を正当化する論理と言ってもいいと思います。
ここはロシア革命を主導したレーニン、トロツキーの発言が参考になるでしょう。
彼らはカントの「善意志」といった普遍的道徳を行動規範とはしていません
[p.201]。
闘いの過程では欺きや術策を含めたあらゆる手段を執る必要があると主張します。
そして革命の際に行使される暴力は他の暴力に優越し、正当化されるとします。

こうした観念は近代の合理主義的な観念なのでしょうか。
メルロ=ポンティはマルクス主義における暴力と革命の関係を考察します。
ここで重要となるのは、「魂の無垢」という観念だといいます。
この観念は純粋に宗教的思考の産物のように思えます。
しかしマルクス主義の思想にこの観念は深い影響を与えているといいます。
純粋な意識があるとすれば、そこに身体的な力を及ぼすことは不可能です。
しかし現実の人間世界においては、純粋な魂は手の届かない存在だと規定します。
そのため、暴力は現実の体制に共通した特徴であると考えることを可能とします。
[p.208]
ここにおいて、純粋さと暴力とどちらを選ぶのかという選択肢はあり得ません。
革命という目的達成のために、どの暴力を優先すべきであるかが問われるのです。

暴力が正当化される世界は、誰しも望むところではないでしょう。
しかし、現実には様々な思考様式や観念が、暴力を肯定するように働いています。
過去の帝国主義然り、近年のアメリカの一国主義的軍事行動然りです。

こうした枠組みや観念が、今後「変化」していく可能性はあるのでしょうか?
オバマ「新大統領」には、世界に新たな枠組みを提示する以前に課題が山積です。
即座に大きな変化を期待することはできないかも知れません。
しかし、希望を持ち続ける価値はあるかも…。
オバマ候補の勝利演説には、こうした期待を抱かせる力強さがありました。基づいたものではなさそうです。
by okphex | 2008-11-05 23:50 | 書籍