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by okphex
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『それでも私は腐敗と戦う』

『それでも私は腐敗と戦う』 イングリッド・ベタンクール著/永田 千奈 訳 2002年 草思社

7月3日早朝、突然のニュースが世界を駆け巡りました。コロンビアの国会議員で大統領候補ともなったイングリッド・ベタンクール氏が、2002年に誘拐されて以来実に6年ぶりに、14人の人々と共にコロンビアのゲリラ組織FARCの許から解放されたというのです。

TIME.comのベタンクール氏解放を伝える記事

ベタンクール氏の名前に馴染みのない人も多いでしょう。彼女はコロンビアの政治家一家に生まれ、幼い頃よりヨーロッパの上流階級の中で育ちました。
母国の政治的腐敗に心を痛めた彼女は、暴力と不正を糺すために、両親と同様に政治の世界に身を投じます。彼女は女性の地位向上や麻薬組織との対決姿勢を強く打ち出し、その行動力と断固とした姿勢は、コロンビア国民に勇気を与えます。しかしこうした彼女の存在を脅威と感じた政敵や麻薬組織は、あらゆる手段で脅迫を加えます。
政治家の誘拐や暗殺が日常茶飯事のコロンビアで、彼女は身の危険を感じつつも、闘いを止めようとはしません。そしていよいよ大統領選挙に出馬し、選挙活動を展開した最中の2002年、ゲリラの活動地域で消息を絶ちます。
表題の本は、こうした彼女の半生を描いた自伝であり、その結末は彼女の失踪によりすっぱりと断ち切られています。彼女の生存に一縷の望みを託す一文で本書は締めくくられています。

失踪以降、彼女はゲリラの許に囚われているとも、既に殺されてしまったとも様々な報道や憶測が飛び交いました。しかし今回の解放で、ベタンクール氏が再び元気な姿を現したことで、コロンビアの人々だけではなく、世界中の多くの人々が安堵し、勇気づけられたのではないでしょうか。
by okphex | 2008-07-03 11:06 | 書籍