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by okphex
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「ナノ」の世界と、伝説の剣

Inman, M. 2006. Legendary Swords' Sharpness, Strength From Nanotubes, Study Says. NATIONAL GEOGRAPHIC NEWS.より

鋼鉄よりもはるかに硬く、コンピューターの性能を飛躍的に向上させ、エネルギー問題を一挙に解決するかも知れない、夢の素材「カーボンナノチューブ」。カーボンナノチューブとは一体どんなものなのか、「すごいもの」らしいということは聞いたことがあっても、その正体を具体的に説明できる人はそう多くはないのではないでしょうか。偉そうに記事に取り上げる僕もその一人です。
カーボンナノチューブの詳しくてわかりやすい説明は、こちらにおまかせするとして、今回ご紹介するお話しは、数百年も前に作られた「伝説の剣」に、実はカーボンナノチューブが使われていた、というものです。

旧約聖書にも登場する、世界最古の都市の一つダマスカスには、独特の製法で作られる鋼が伝えられています。
その表面には複雑な文様が施され、この鋼で鍛えられた刀剣は、刀身の上から落とした絹の布を真っ二つに切り裂き、岩を貫いても刃こぼれすることがない、という伝説が残されています。
果たしてこの剣の鋭利さの原因は何なのか、これまでも様々な研究が行われてきました。そして今回、結晶学者のチームが、電子顕微鏡による調査の結果、この剣の鋼にはカーボンナノチューブが含まれており、それが刃の切れ味や耐久性を増しているのだと発表しました。それが本当なら、17世紀にはすでに、カーボンナノチューブを利用した鋼の鍛造方法が存在していたことになります。
ダマスカスの刀剣の原料は、インドからもたらされ、それが刀鍛冶の特別な製法で鍛造され、独特の文様を刻み込みます。彼らの報告によると、この行程で、非常に硬いセメンタイトと呼ばれる金属製の物質を含んだカーボンナノチューブが刀身の表面を多い、それがもともとは刃こぼれしやすい鋼の強度を飛躍的に向上させたというのです。
当時の刀鍛冶の人々が電子顕微鏡やカーボンナノチューブの知識を有していた訳はないので、刀の強度を増す製法を試行錯誤した結果、現在のハイテク技術に近い技術を身につけたのでしょうね。残念ながら、当時の製法は秘伝で、現在は研究者達が推測でその技術を復元するしかないのだそうです。
伝説の剣というと、北欧神話の「ノートゥング」や、アーサー王伝説の「エクスカリバー」、そして日本書紀の「草薙剣」などが有名ですが、これらの剣の強さの秘密にも、何か驚くべき技術が関わっているのかも知れないですね。科学と伝説が融合した、ロマンを感じさせるお話しでした。

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ありがとうございました。
by okphex | 2006-11-20 19:48 | 人類学・人文科学