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by okphex
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植林活動の問題点

Michael Hopkin. 2005. "Tree planting not always green". news@nature.com
邦訳「科学ニュースあらかると」 2005 "植林は常に環境に優しいわけでは無い"

地球環境の理想的な姿を、緑に覆われた山々として想像されることは多いですね。テレビで配信されるイメージはそんな意識を強め、僕もまた緑豊かな森林に、より自然な地球環境を重ね合わせます。例えば、日本の政府も関与した開発政策によって、広大な土地が荒廃したフィリピンの熱帯雨林を回復させるプロジェクトを推進している日本のボランティアの方々の活動を知って、とても感動したことを憶えています。
しかし、Natureの記事は、以上のような自然環境再生のための植林事業が、必ずしも自然の回復に貢献している訳ではない現実を報告しています。

例えば、植林が行われた地域ではその一割以上の箇所で河川の水が枯渇するなどの現象が発生しているということです。これは、植林のために選ばれた樹木が、二酸化炭素の吸収力に優れている反面、より多くの水分をため込もうとする性質を持っているため、森林から流入する水の量が減少し、その結果河川の推量現象を招いていると指摘されています。

水の河川への流入の現象は、豊富な栄養分が河川へと流れ込むことを防ぐ効果もあり、その結果赤潮被害が現象したとの報告もありますが、そのような効果を考慮に入れたとしても、植林による水のバランスの変化は、土壌の塩分濃度の上昇を招くなど、無視できない規模の副作用を引き起こす可能性が示唆されています。

このように様々な問題も存在する植林事業ですが、だからといって即時に中止すべきであると主張したい訳では、もちろんありません。この問題を分析している科学者は、植林事業に必要な鍵は、植林する地域の状況を理解し、その場所にもっとも適した植林を行うべきであると主張しています。
問題点の解決には、どうしても最も目につく要因の改善や除去に目が向きがちになりますね。しかし、環境といった地球規模の問題の対処には、複合的な要素が現象を引き起こしていることを理解する必要があります。そのため画一的な基準に基づいた政策ではなく、より地域の実状に沿った柔軟な対応が求められていると言えます。

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ありがとうございました。
by okphex | 2005-12-25 17:06 | 人類学・人文科学