人生の「神話化」
2010年 10月 14日
上記の文献は、アメリカの武術研究者、ワイリー氏による、フィリピン武術の詳細な研究書です。フィリピン武術と言われてピンとくる人は少ないでしょうが、二本の棒を使う護身術で、ブルース・リーの映画や、『ボーン・アイデンティティ』という映画に登場したことがあります。
僕の研究に深く関わる対象であるため、日本ではほとんど知られていないこの武術の研究書を読んでいるのです。
この本では、フィリピン武術の歴史、使用する武具のバリエーションなどを紹介していますが、何と言っても面白いのは、後半の「マスター」と呼ばれるフィリピン武術の師範の語りです。武術家としての背景として、戦争体験や移民先での苦境などが述べられています。一つ一つはとても個人的な物語ですが、それらが統合して、「フィリピン武術の現代史」とでも呼べるような大きな物語の構造が浮かびあがってきます。身体技法の実践と、自らについての語りを通じた、一種の「神話」が紡ぎ出されているかのような感覚を抱きました。
by okphex
| 2010-10-14 08:23
| 書籍